〈1999・4・4 第33回日本アイスホッケーリーグ
プレーオフ ファイナル第4戦 コクド―王子製紙〉
special thanks to M
やはり、コクドは王者だった。
第3ピリオド6分9秒、レギュラーシーズンのポイント王・八幡
から、日本を代表するウィング・桑原にパックがわたり、5点目と
なるシュートがネットに突き刺さった。ショートハンド・ゴール。
最後には強い者が勝つ、そう宣言するかのような、完勝だった。
前王者コクドは、前季リーグ最下位の日本製紙クレインズに苦杯
を喫する波乱の幕開けで、今シーズンのスタートを切った。NHL
のピッツバーグ・ペンギンズでマスクをかぶったこともある新GK、
ロブ・ドプソンの好セーブの前に、スロースターターの弱点を露呈
したのだ。
選手層の厚さでは群を抜くコクドは、優勝候補の筆頭に挙げられ
ていた。シーズン序盤は、スタートダッシュをかけた西武鉄道の後
を追う展開に甘んじていたが、徐々に地力の強さを発揮し、1位で
レギュラーシーズンを終えた。
プレーオフのセミファイナル、コクドの対戦相手は、『ドプソン
効果』が大きかったのか、プレーオフ出場圏内の4位にくいこむ大
躍進を見せた日本製紙クレインズだった。捨て身でかかってくるク
レインズは、スケーターのスピード、チェックとも凄まじいものが
あった。守護神ドプソンも、豊富な経験を感じさせる落ち着いた守
りで、ナイスセーブを連発した。
コクドはパスがつながらず、ラインが機能しない。FWが苛立っ
てペナルティを連発、DFに負担がかかって消耗する最悪の展開。
やっとの思いで打つシュートも、リバウンドを出さないドプソンの
巨体に吸い込まれ、まるで入りそうにない。第1・2戦とも出口の
見えない泥沼の展開で、ホームの新横浜でまさかの2連敗を喫した。
第2戦の終了後、コクドの選手たちは、クレインズの応援団の万
歳三唱を背に受けて、一様にうつむいてリンクを後にした。プレー
オフは3戦先勝方式だから、もう一つも落とせない。
いわゆる「崖っぷち」の第3戦、新横浜アイスアリーナは、第1
・2戦とはまるで違う熱気に満ちていた。コクドは、別のチームで
あるかのように攻撃的に戦った。怖いほどの気迫が、フェンスを通
して伝わってくる。
第1ピリオド2分15秒、第1セットの坂田・坂井・タッカーの
連携で先取点を奪う。第2ピリオド開始早々の1分1秒、八幡のシ
ュートのリバウンドを桑原が叩いてゴールを決め、2―0とリー
ドを広げる。13分40秒にクレインズのゴールが決まり、1点差に
つめよられるが、第3ピリオド終了直前、6人攻撃を仕掛けて無人
となったクレインズのゴールに、八幡がパックを持って走り、エン
プティネットゴールでとどめを刺した。パックを持って走っていく
八幡の背中が、コクドが王者であることを思い出させた。
クレインズのホームである釧路でも、コクドは一度思い出した王
者の誇りを忘れなかった。第4戦は、ベテラン坂井が5得点の大活
躍で勝利をもたらす。第5戦は、1点差の接戦の末クレインズを下
し、ようやくファイナル進出にこぎつけた。
王子製紙と戦うファイナルは月寒で幕を開け、第1戦を落とし、
第2戦をとって、1勝1敗でコクドは東伏見に帰ってきた。
第3戦は、4―2でコクドが勝った。しかし、攻撃に迫力は感じ
られず、なんとなく手にした勝利という印象だった。
しかし第4戦、コクドは、豊富な戦力を見せつけた。第1ピリオ
ド4分22秒、第1セットでタッカーと呼吸の合った攻撃をシーズン
を通して見せてきた若手の坂田が、タッカーのパスを受けてシュー
トを決めた。5分32秒には、今季の最優秀新人にも選ばれ、期待通
りの成長を遂げた鈴木がゴール。第2ピリオドに入っても好調な
第1セットは、11分41秒、今度はフォスター、坂田のアシストで
タッカーがゴールを決めた。続いて15分16秒、八幡、鈴木のアシ
ストで、桑原が会心のゴール。そして、二瓶次郎を欠いた今シー
ズン、一人でゴールマウスを守り続けた守護神岩崎は、スーパー
セーブを連発して王子に得点を許さなかった。
ベテランの衰えない闘志と、成長し続ける若手の絶妙な調和で、
コクドは連覇を成し遂げた。どんな苦況からもはい上がって、最後
には勝利を手にするのが、本物の強さだろう。5―0の完勝で優勝
を決め、笑顔でリンクを一周するコクドの選手たちには、王者の自
信が溢れていた。
ホームヘ